「体の不思議2-3」⑦筋肉を使わないと起こること

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筋肉は使わないと衰える。でも、それだけではない。

こんにちは。木村建雄です。

前回は、同じ動きをしていても、人によって働く筋肉が違うことがある、というお話をしました。

そのため、同じ作業をしていても疲れる場所が違ったり、ほかの筋肉や関節が動きを補ったりすることがあります。

今回は、その続きです。

筋肉は使わないと衰える。

これは皆さんもよくご存じだと思います。

でも、実はそれだけではないんです。

論文を見ていて分かってきた、身体のちょっと不思議な働きを紹介します。

筋肉を使わないと何が起こる?

筋肉を長い間使わないでいると、筋が細くなる「筋萎縮」が起こります。

筋力も低下して、今まで持てていた荷物が重く感じたり、歩くと疲れやすくなったりすることがあります。

でも、変化するのは筋肉の大きさだけではありません。

脳や神経が筋肉を働かせる能力にも、変化が起こることがあります。

それを調べた研究を2つ紹介します。

研究① 4週間、手首を固定すると?

2014年、Clarkらは、健康な成人を対象に、手首と手を4週間固定する研究を行いました。

固定した人たちを、何もしないグループと、頭の中で筋肉に力を入れるイメージ練習をするグループに分けました。

すると、固定するだけだったグループでは、手首を曲げる筋力が約45%低下しました。

ところが、イメージ練習を行ったグループでは、筋力の低下が約24%に抑えられたのです。

実際には手首を動かしていないのに、頭の中で力を入れる練習をすることで、筋力低下に違いが出たのです。

僕も整形外科で、骨折によるギプス固定の後、手が思うように動かなくなった患者さんを何人も診てきました。

固定中でも、動かしてよい関節を積極的に動かしていた患者さんと、あまり動かしていなかった患者さんでは、固定を外した後の動き方に違いがありました。

これは僕自身が臨床で経験してきたことです。

今回の研究では、実際に動かさなくても、頭の中で力を入れる練習をすることで筋力低下が軽減されたという結果が出ています。

筋肉の働きには、脳や神経の働きも大きく関係していることが分かります。

研究② 14日間、ベッドで安静にしていると?

もう一つ、2015年のŠarabonらの研究です。

健康な中高年の男性16人に、14日間ベッド上で安静に過ごしてもらいました。

その前後で、体幹の筋肉の反応を調べています。

実験では、立った状態で両手にかかっている重りの負荷を、突然なくします。

すると、身体にかかる力のバランスが変わります。

そのとき、腹筋や背筋などの体幹筋が、どれくらいの時間で反応するのかを筋電図で測定しました。

結果はどうだったでしょう?

14日間の安静後には、突然の変化に対して体幹筋が活動を始めるまでの時間が長くなっていたのです。

一方、自分から腕を動かす前の準備反応は、一部の筋肉で早くなっていました。

つまり、身体を使わないことで、すべての反応が遅くなるわけではないことがわかりました。反応の種類によって、変化の仕方が違ったのです。

筋力と筋肉の反応は別のもの

ここまでの研究から、筋肉を使わないことで起こる変化には、いくつかの種類があることが分かります。

一つは、筋肉が力を発揮する能力の変化。

もう一つは、筋肉が反応を始めるタイミングの変化です。

例えば、重い荷物を持ち上げるには筋力が必要です。

一方、突然身体にかかる力が変わったときには、筋肉が適切なタイミングで働くことも重要になります。

力が強いことと、必要なときに筋肉が働くことは、同じではないんですね。

身体を動かすことの大切さ

ピアニストや楽器を演奏する人の指の動きを見たことがありますか?

信じられないくらい速く、複雑な動きをしていますよね。

あれは、何度も練習を繰り返すことで、神経系がその動きに適応し、スムーズに動かせるようになっていくからです。

もちろん、今回紹介した2つの研究は、楽器の練習を調べたものではありません。

でも、身体の働きには筋肉の大きさや力強さだけでなく、神経系の働きも大切だということがわかりました。

普段から歩いたり、いろいろな方向に身体を動かしたりすることには意味があります。

筋肉を鍛えることだけでなく、バランスをとりながら、動きにくい動きを、無理のない範囲で していくことも大切にしたいですね。

自分の身体を、いつまでも自分の思うように動かせるように。

今日も、できることから身体を動かしていきましょう。


 

参考論文

Clark BC, et al. (2014). The power of the mind: the cortex as a critical determinant of muscle strength/weakness.

Šarabon N, Rosker J. (2015). Effects of Fourteen-Day Bed Rest on Trunk Stabilizing Functions in Aging Adults.

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